defenseless


　無防備だな。と、寝顔を見ながら思った。

　すこやかな寝息が繰り返されている。
　目を覚ます気配はない。

　人前で無防備になると言うことは、煮るなり焼くなりご勝手に…と言うことだ。
　まあ、煮るつもりも焼くつもりもないけれど、見ているだけというのも、何だか物足りない気がする。

　湧き上がるのは好奇心なのか、それとも衝動なのか。
　強いて言えば、赤ん坊の頬を指先で突いてみたくなる心境に近いのかもしれない。

　額にかかる髪をそっと撫で上げて、唇を寄せてみる。

　唇の先の微かな感触を頬に落とした瞬間に、間近で睫毛の先が震えた。
　けれど、ゆったりとした呼吸は繰り返されたまま。
　一つ、二つと暫し眺めてみるけれど、目を開ける様子はない。

　思わず込み上げた笑みを密やかに留めて、小さな口付けを落とす。


　無防備な鼻の先に。


終


「な、何で口じゃないんだよ？」
（やっぱり起きてたか）


肩すかしは楽しい（笑）
Gratitude of applause32：20100902：サイトＵＰ20101103：sears