ふくれっつらの王子様


「―――…って、俺が悪いんッスか？」


　泣きそうになっているのを必死で耐えながらも拗る子供のような顔で彼は訊いてくる。
　ブリッツボール界のエースにこんな顔をさせることが出来るのは、このスピラにただ一人だろう。

　どうせすぐに元の鞘に戻るんだろうと容易に予想できてしまうような、他愛のない喧嘩だ。
　経緯を聞いていても、「それは惚気か？」と何度訊きそうになったか分からない。

　とは言え…

　犬も食わないものかもしれないけれど、当事者たちにとっては大事件。
　それこそ、この先の人生が左右されるかもしれないような深刻な問題だ。


　ティーダは食い入るようにこちらを見詰めて答えを待っている。

　…さて、どうしたものか。

　頷くことも、否定もせずに苦笑に留め、ギップルは空のグラスへとボトルを傾けた。
「まあ、飲めって…」

　今頃は愛しの彼女もふくれっつらのお姫様を目の前に頭を悩ませているのだろうかと、遠い空の下に思考を馳せながら。


終


（ギップルとティーダ）

Gratitude of applause30：20100719：サイトＵＰ20100902：sears
Fortune Fate様：お題「困った人達5題 2」より