Is love satisfactory only at one? 　淹れたてのお茶をパインの前に置くと、ギップルはいつものように向かいの椅子へと腰を下ろした。 　彼女は濃い水色（すいしょく）を見詰めながらカップを持ち上げていく。 　そっと息を吹きかけてから一口飲むと、ふわりと瞳の奥を綻ばせた。 　どうやら今日も合格らしい。 　その瞬間が堪らなく嬉しくて、やっぱり頬が綻んでしまう。 「今日のお土産は何？」 「クッキーだけど？」 　彼女は時折…スピラ各地で購入したフルーツや手作りの焼き菓子なんかを抱えてやってくる。 　焼き菓子の殆んどはかの大召喚士様や幼馴染みの試作品とかで、俺は態の良い実験台なのかもしれない。 「今回誰が作ったんだ？シドの娘か？」 　あいつが作った場合は要注意だ。何が入っているか分かったもんじゃない。 「材料捏ねたのはユウナ。型抜きは三人で」 　 　ザラザラと袋から出てきたのはトランプのマークに型抜きをされたクッキーだった。 　早速頂こうと手を伸ばしかけて、ギップルはふと違和感に気が付いた。 　トランプのマークは四種類のはずなのに… 　どんなに眺めても一つ足りない。 「なあ、何でハートが無いんだ？」 「気のせいだろ？」 　素っ気無いまでの口調の答えに意図的なものが感じられた。 　ざっと数えて二十枚以上あるのに一つも入っていないと言うのは確率的にもおかしい。 「まさか態とか？」 　肩を竦めてかわす仕種に予想は確信に変わる。 　だけどどうしても分からない。 　ハート型を入れて来ないとは、一体何を意味しているのだろう。 「…なあ、何で？」 　微細な不安を滲ませて問うと、緋色の瞳がちょっと悪戯っぽく含みを湛えて笑った。 「さあね、考えてみたら？」 終 　彼女は結構乙女チックだと思います。 　Gratitude of applause1：20050506：sears