Shooting star


　深い闇に散りばめられた煌めき。
　今夜は月の光も密やかで、空いっぱいに瞬いていた。

　時折、天を渡る星の河から細い尾を引いた雫が零れ落ちる。

「あ、また流れた」
「えっ？どこどこ？」

　一瞬の、儚い光の筋をまた捉え損ねたらしく、少し慌てたような声が問いてくる。
　だが、既に深い闇に溶け込んでしまった後では探せるはずもない。

　パインは呆れ混じりの苦笑を漏らした。

「もう消えちゃったって」

　二人同じ空を眺めているはずなのに、先程からどちらかしか見つけられない流れ星。

　うーん…と残念そうな呻きと共に小気味の良い金属音が響く。
　視界の端で小さな灯りが揺らめいた。
　どうやらギップルは一服したい気分になっているらしい。


「…ギブアップする？」
「まだまだ。夜は長いんだし」

　愉しげな笑い音を含んだ答えにこちらの方が溜息をつきたくなった。
　夜通し天体観測をする破目にならなければ良いけれど。

「やっぱり相性が悪いんだな」
「相性の問題じゃないと思うけど？…ってか、悪くねえだろ？」
「どうだかね」

　いつものと変わらない軽口を叩き合いながら、ぼんやりと空を眺める。

　夜空を見上げてからどれくらいが経っただろう。
　セルシウスの甲板に寝転んで、下り星を数え始めてから。


　感じ取れない気配。
　そして、届かない温もり。
　傍らに彼の姿はない。
　距離に隔てられて触れ合うことも叶わない。
　ただ交わせるのは通信スフィア越しの声だけ。

　けれど、二人は共にある。



　深い闇夜を飾る星たちの間を光の一滴が零れ落ちる。

「おっ…」
「あっ…」

　距離を越えて重なった声。


　同じ空の下で、二人は共にある。


終


流れ星に何をお願いしたのでしょう。
Gratitude of applause13：20070704：sears：サイトＵＰ20070910